特殊伐採、そして林業

今回、木を切ってくれた方は、周囲に民家のある場所で、背の高い木を切る特殊伐採専門の方で、山林の木を倒したことはないという。

このけやきを切り倒す際は、最初に太い枝にワイヤをかけなければならない。右側の椿の木から登って枝にワイヤをかけたが、当初はこのケヤキを下から30m登ろうとした。この職人さん、昭和一桁生まれ85歳以上だ。

若い頃ならこんな太い木でも30m軽く登れたと言っていた。

神業だ。スポーツクライミング選手並みの技が要求されるうえに、枝にたどり着くまでは安全確保できず、落ちたら終わりだ。

大子町にお住まいながら、関東各地からお呼びがかかるらしい。

こういう技を持った方は関東でも少ないのだろう。

特殊伐採という世界があることは昔から知っており、すごく興味を持っていたが、今回、本物を見れて良かった。

 

さて、一方で、以下の梅ノ木、切るの簡単そうながら、今回、アクシデントが起きた。木が倒れる瞬間に隣の木に枝が絡まり、思わぬ方向に木が倒れ、作業者の足の甲の上に切った木が載ってしまった。

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ケヤキに比べれば軽いものの、100kgは優に超える重さ。

直径10cm程度の切った木が倒れずに立ったまま作業者の足の甲の上に載ったのだ。

私は現場を目撃していたが、梅ノ木は枝が複雑に伸びており、倒れた作業者の足の甲の上の木を1mmも動かすことができなかった。大急ぎでユンボを呼んできて木を動かしてもらい事なきを得た。なんとこの作業者、木をどかしたら自力で立ち上がり歩き出した。

下の土がとても柔らかく、クッションとなり大きなけがに至らなかったとのこと。

骨折もしてなかった。私は事故の瞬間、この人はもう2度と歩けない・・・と確信したが、本当にそうならなくて良かった。

 

この事故で、私は木を切る怖さを身に染みて感じた。

自伐林業といって、森林所有者が一人で軽トラとチェーンソーだけ使って木を伐りだす林業の手法があり、私は将来それをするつもりでいた。特殊林業にもぜひチャレンジしたいと考えていた。

ところがこの事故を見て「林業は生易しい仕事ではない。やるにしても組織に所属して」と考えを変えた。

 

林業やってる人で高齢な方を何人か見ているが、林業従事者は体力的にも精神的にも健康寿命が長いと感じている。技術的にも面白そう。山の緑を守るという社会的な意義深さも感じる。木の品質で収益が変わる商売上の面白さもありそう。60歳の素人だが残りの人生で林業に深くかかわっていきたい。

今回、人里離れた場所で甚大なケガをするリスクは低くないことを知ったことは良かった。林業や特殊伐採の奥深さに触れた気がしている。